変化
星野マスミは当社で仕事を始めてから、ずっとショートボム風の髪型だった。しかし息子さんの受験を機に髪の毛を伸ばし始めたのだ。それが堪らなく似合っており、そして髪の毛を後ろで縛った姿に自分は思わずテレを隠しながらも言ってしまった。
「かわいい。凄く似合っているよ。このまま伸ばして欲しいなあ」
ちょっと間違えればセクハラと取られてもおかしくない発言だった。
しかし彼女は
「凄くうれしい。社長だけだよ。私の髪型を気にしてくれるの」
「旦那様とか何にも言ってくれないの?」
「旦那はもういいよ」
上機嫌で、職場に戻って行った。
そして、その頃、彼女にはもう一つ別の話題が立っていた。彼女は男女を問わず、知り合いが限りなく多い。デザイン学校の生徒たちであり、二人の子供の学校関係者であり、部活父兄、それ以外にも地元の友人、そして趣味のマラソン仲間やスカッシュ仲間である。
そしてその友人知人がよく当店を訪れていた。そのたび友人に髪型のことを褒められていた。そしてもう一つの話題というのが男女混合スカッシュを辞めてしまうということだった。もともとチームに所属していて当然男女がいなければ成り立たないものだが、女性の参加者が少なく、彼女が辞めてしまうのはチームとして困ってしまうと彼女は自分に説明してくれた。
自分は彼女が辞めてしまう理由がイマイチ理解できなかった。なにせ15年近くそのサークルでやっているのにいきなり大した理由でなく辞めてしまうからだ。
そんな時、彼女は急に髪の毛をバッサリ切ってきて、元の髪型に戻したのだ。
自分はどちらの髪型も彼女に似合っていて好きだったのですが、特にその髪の毛を切ってしまったことがショックだった。あれほど、褒めたのになあ。
そこで彼女に聞いてみた。
「どうして髪型かえてしまったの?」
彼女は屈託のない笑顔で答えた。
「周りの友達がね。前の髪型がいいって言うから。それにスカッシュやるとやっぱり邪魔なんだよね。どうしてもね」
あれー辞めるんじゃなかったの?自分はその二つの変化を自分的にはポジティブにとらえることができなかった。なぜなら、もしかしたらそこに旦那様以外の別の男?が見えてきたからだった。
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